1st Album (CD) BSK-0001
Released 2007.6.1
1. another sing-song.
2. strawberry_jam.
3. バター
4. ピース スタイル
5. flow fish
6. echo_echo.
7. ラフロイル
1stライブと同日に発売されたelectra_electro.の1stアルバム。
否応なしに期待感の高まる「another sing-song.」のイントロが、アルバムの幕開けを冷厳に演出する。切ないメロディーが歌い出された瞬間、electra_electro.の音楽の決定的な水門が開いたような気がした。構築感に富んだ文句なしの名曲である。空間に散らばっている素材の言葉を掴み取り、短いセンテンスを対角に並べていくmuu.の歌詞は、素朴感と明確感を楽曲にもたらしている。細やかに震動しながら心に沁みこんでくるボーカルと、適度に抑制されたyu-kiのコーラスも印象的。
英語詞を歌うmuu.のボーカルには、どこにもおさまらないふわふわした存在感と小悪魔的な魅力がある。「strawberry_jam.」はまさにその極北と言っていいだろう。楽曲全体はデジタルな手法で彩られてはいるが、構築されたサウンドは驚くほどオーガニックなものである。ギターとベースの独特のタイム感(拍の裏に対する鋭敏な意識)が、聴き手の心地よさに繋がっている点も特筆すべきだろう。
一転してアダルトで艶やかな声質で聴かせる「バター」。内省的に緩やかな波を持つメロディーと叙情詩的な歌詞世界が見事に調和しており、美しい情感と陰影、胸苦しい余韻を残す名曲である。その律動の中、いつのまにか聴き手の意識は透き通った深いところへと沈潜していく。
「ピース スタイル」のリードボーカルはギターのyu-ki.。トラック、メロディー、ボーカルともスーパーカーからの影響をもっとも強く感じさせる1曲であろう。男女二声が絡み合うサビでは、スーパーカーのナカコー+フルカワミキが生み出す鮮やかな色彩、また「One Thousand 20th Century Chairs」におけるカヒミ・カリィ+堀江博久のようなスリリングさをも感じさせる。間奏ではボーカルがさりげなくコラージュされているなど、音の隅々まで意識が行き届いていることが窺える。バンドという形態にこだわったカタルシスへの希求とともに、細部まで作りこまれた濃密な楽曲である。
Radioheadの「Pyramid Song」に似た感触が立ち現れる「flow fish」では、再びyu-ki.がリードボーカル。体温の低い声が魅力的だ。さりげなく奥行きのあるフレーズにより、一音の持つ重みや凄みをイマジネーションの領域で見事に結晶化させることに成功している。こういった音響系ともいえるサウンドアプローチも新鮮に思える。
electra_electro.名義での記念すべき初作品である「echo_echo.」。この完成度は尋常ではない。jol.のメロディーは冴えに冴えまくり、その矜持は楽曲の力強い構図に表れている。この1曲をもってしてソングライターとしての才気の一面をくっきり提示していると断言できる。オケとボーカルの親和性が極めて高く、ギターの表現力、哀感も申し分ない。「~Come」「~Go」のウィスパリングと、五線譜の空を優雅に舞うかのごときmuu.のボーカルには、聴き手の琴線を掻きまわす非日常のエコーがある。こんな楽曲を聴いて彼らの前を通り過ぎることなどできるだろうか。
アルバムラストは「ラフロイル」。まるでゲンスブールのB級映画で流れていそうな、キッチュでカラフルな音風景。そのユニークなメロディーは、聴けば聴くほど耳から離れなくなる不思議な魅力に溢れている。フェードアウトの潔さが痛快だ。様々なバージョンが存在する曲だが、ここに収められたのは、英語詞のバンドバージョン。
最後に、お好み仕様のジャケット&バックインレイ、フォント使い分けの歌詞カード&訳詞、さらに帯の裏面にまで行き届いた様々なギミックなど、音楽同様に細部まで目が行き届いており、パッケージ全体の完成度を高めていることにも触れておきたい。